ボードゲームレビュー第281回「ウイングスパン」

投稿者 : kiwistaff on

「ウイングスパン 」
作者:エリザベス・ハーグレーブ 作
メーカー:アークライト
プレイ人数:1~5人
対象年齢:10才以上
プレイ時間:約40~70分



 毎度みなさんこんにちは。あるいはこんばんは。
最近は世間を騒がす新型コロナウィルスのおかげでなかなか外出しにくい状況が続いてますが、ずっと家にいるのも退屈ですよね。
しかし、そんな時には気分を変えてボードゲームで大自然の中へお出かけしてみるのはいかがでしょうか?



 というわけで今回ご紹介するのはバードウォッチングがテーマのこのタイトル、『ウイングスパン』です!
昨年のドイツ年間ゲーム大賞2019でエキスパート大賞を受賞、同じくドイツゲーム大賞2019でも大賞に輝いた本作。
日本語版が発売されるや、あっという間に完売状態になってしまったりもしました。
つまり面白さは折り紙付きってわけですよ!

 「でもバードウォッチングなんてテーマで面白くなるの?」という疑問はごもっとも。
しかしそこは『ワイナリーの四季』や『サイズ -大鎌戦役-』などのヒット作を手掛けてきたストーンメイヤーゲームズ。
ヘビーながらコンパクトにまとめたゲームメカニクスで、遊びやすさとガッツリとしたプレイフィールを両立したルールデザインには定評があります。
本作でもそのスタイルは遺憾なく発揮されています。

 プレイヤーは愛鳥家のバードウォッチャーとなり、自分の土地に鳥たちを呼び込むのが目的です。
たくさんの鳥を集めていくと土地はにぎやかになり、シナジーが生まれてさらに他の鳥を呼びやすくなっていきます。
こうした良サイクルを作り上げて、豊かな環境を作り上げていきましょう。

 【ゲーム内容】
というわけで早速セッティングから見ていくことにします。
まずは『鳥カード』を全てまとめてシャッフルし、山札を作ります。
ここから3枚をオープンして、カード箱の蓋部分に並べましょう。
この蓋部分、ちゃんとカードを並べられるトレイになっていて、収納とプレイ両方に使えるいいデザインだと思います。




 それから『目的ボード』の各マスの上に『目的タイル』をランダムに1枚ずつ置きます。
これが各ラウンド中に目指すべき目標、つまり得点源というわけです。
『目的ボード』を見てもらえれば分かりますが、ラウンドを示すますが4ラウンド目までしかありません。
つまりこのゲーム、どうあがいても4ラウンドで終了なのです。
意外と短いと思うかもしれませんが、プレイしてみるとこれが絶妙な長さであると気付かされます。



 その他、『餌箱』型のダイスタワーやトークン類を全員の手が届くところに置き、『ボーナスカード』の山札も作っておきます。



 次に各プレイヤーに『個人ボード』と『アクションコマ』8個、『ボーナスカード』2枚、『鳥カード』5枚、『餌トークン』各1個が配られます。
しかし、この全てが手に入るわけではありません。
例えば、『鳥カード』1枚を手元に残すためには、任意の『餌トークン』1個を捨てなければなりません。
鳥を自分のボード上に呼ぶにはコストとして『餌トークン』が必要になりますので、残したい『鳥カード』に使う種類の餌は確保しておくのが得策です。



 また、得点源のひとつである『ボーナスカード』も2枚のうち、どちらか1枚しか選べません。
これもカードの内容をよく見て、より達成しやすそうなカードに決めましょう。
特定の条件の『鳥カード』を集める場合、該当するカードが山札に含まれている割合を書いてくれているのが親切ですね!



 これらの準備が終わったらスタートプレイヤーを決め、『親マーカー』を渡します。
以上でセッティングは終了。つまづく要素はほとんどないくらい簡単ですね。



 さて、ゲームに入る前に、ここでまず『鳥カード』の見方をご説明しましょう。



 鳥を呼ぶ時には、まずカードの左上を見ます。
◇型のアイコンで示されているのは『生息地』と呼ばれ、「この鳥がボード上のどのエリアに住めるのか」という条件です。
例に上がっている「アオバネアメリカムシクイ」なら、森林と草原エリアに配置可能であり、逆に湿地エリアにはこの鳥は配置できません。
その下に描かれているのが、呼ぶために必要な『餌トークン』の種類と数です。



 また、カード左側中央あたりに描かれているアイコンは上から順に「勝利点」「作る巣の種類」「このカード上に置ける卵の数」を表しています。
巣の種類は、『目的タイル』の条件の他、『ボーナスカード』の達成条件や『鳥カード』の能力で使用されます。
ちなみに☆マークはどんな巣にでもカウントできるというオールマイティのシンボルです。



 鳥の種類によっては特殊能力を持ったカードも存在します。
基本的にはプレイヤーが選んだアクションに付随して、同列のエリアに置かれた『鳥カード』の能力が「右端に置かれたものから順に」起動されます。
中には他のプレイヤーが行ったアクションに対応して起動するものがあったり、配置時のみ即座に効果を発揮する能力があったりします。
こうした鳥の能力は強力なものが多いので、うまく活用していくのがゲームを有利にするコツです。



 ではここからプレイに入っていきましょう。
プレイヤーは手番が回ってきたら、以下の4つのアクションから一つ選び、『アクションコマ』1個をボード上に配置して実行します。

 ・手札の『鳥カード』をプレイ
・『餌トークン』の獲得と森林エリアの鳥能力の起動
・産卵と草原エリアの鳥能力の起動
・『鳥カード』の獲得と湿地エリアの鳥能力の起動

 『個人ボード』にもアクションの内容は書かれているので分かりやすくなっていますが、もうちょっと細かく見ていきます。
まずは何はともあれ鳥を呼ばないことには始まりません。
というわけで初手はだいたい「『鳥カード』のプレイ」を選ぶことになるでしょう。
手札にある『鳥カード』の中からプレイしたいカードを選び、必要なコストとして『餌トークン』と『卵トークン』を支払います。
しかし、そのエリアに最初に配置する場合は、まだ『卵トークン』は必要ありません。
必要な『卵』の数はボードの最上段に書かれています。



 これを見て分かる通り、『鳥カード』は各エリアの左端から順に置いていくことになります。
カード配置は左から、能力起動は右からと覚えておきましょう。
鳥を配置してエリアを塞げば、勝利点になるだけでなく、エリアごとのアクションの効果もより強力なものにアップグレードされていきます。

 カードのプレイ時、必要な種類の『餌』が足りない! といった場合、任意の『餌』2個を特定の『餌』1個として支払うこともできます。
意外と見落としがちなルールですので、覚えておくといいでしょう。



 そうは言っても『餌』の数自体が足りないよ~という場合、選ぶべきアクションは「『餌トークン』の獲得と森林エリアの鳥能力の起動」です。
ここで使用するのが『餌箱』型のダイスタワーと5つの専用ダイスです!
プレイヤーは自分の森林エリアを見て、一番左側に書かれている数のダイスを『餌箱』から取り出し、ダイスの出目に描かれた『餌』を獲得できます。
『餌箱』から出されたダイスは、『餌箱』が空になるまでそのままです。
なので、ほしい餌が『餌箱』にあるタイミングを見計らうことも重要になってくるわけです。



 『餌箱』のトレイからダイスが全て取り除かれたら、次に『餌』の獲得アクションを選択したプレイヤーが全てのダイスをダイスタワーに投入します。
それから森林エリアに配置してある『鳥カード』に書かれた『起動時アクション』を解決していきます。



 鳥を配置していけば、前述した通りいずれはコストとして『卵』が必要になります。
それを手に入れるのが「産卵と草原エリアの鳥能力の起動」アクションです。
まだ空いている草原エリアで最も左端のエリアに描かれた数だけ『卵』を獲得できます。
ここで得た『卵』は、自分の土地に来た鳥が産卵したものと見なしますので、必ず『鳥カード』の上にプールしていきます。
当然、カードに描かれた配置上限を超えて『卵』を持つことはできませんので、早急にたくさん『卵』を持てる鳥を確保したいところです。
その後、他のエリアと同様に鳥能力を起動していきます。
ちなみに、ゲーム終了時にボード上に残った『卵』は1個で勝利点1点とカウントされますので、ひたすら『卵』を産み続けるのも戦術の一つになり得ます。



 手札は使えば減っていくもの。
というわけで、手元の『鳥カード』の数が心許ない、あるいはもっと戦術的においしいカードがトレイに並んでると思った時にはこれ。
「『鳥カード』の獲得と湿地エリアの鳥能力の起動」を選びましょう。
トレイの上から、あるいは山札からカードを得ることができます。
ゲーム中、『鳥カード』を補充する手段はこれしかありません。
特に、ゲーム開始前にカード枚数より『餌』を優先した人はすぐにお世話になるはずです。
ここも、鳥を配置していけば一度にもらえるカード枚数が増えていきます。
『ボーナスカード』の中には「手札の枚数が○枚以上あれば○点」みたいなカードもありますので、使うばかりでなく手札に溜め込むプレイもアリなのがこのゲームの深いところです。



 『アクションコマ』を消費して1アクション行うたびに手番プレイヤーは移っていき、全員が手持ちの『アクションコマ』を使い切ったら1ラウンドが終了です。
ラウンドが終われば、配置した『アクションコマ』は全て手元に帰ってきます。
そして『目的ボード』を見て、タイルの条件をより満たしたプレイヤーから高い順位に『アクションコマ』1個を置いていきます。
こうすることで、ゲーム終了時に誰が何点獲得していたかひと目でわかる様になっているわけです。
それから『親マーカー』は時計回りに次のプレイヤーに渡され、トレイにある『鳥カード』は全て破棄されて新たなカードが並べ直されます。

 そう、恐ろしいことに気が付きましたね?
2ラウンド目以降は、ラウンドが進むごとに『アクションコマ』が1個ずつ少なくなっていくのです!
最終ラウンドになると、使える『アクションコマ』は5個しかありません。
これは否が応でも『鳥カード』の能力でシナジーを組んでいかないと、どんどん身動きが取れなくなっていくという秀逸なルールデザインなのですよ!
これによってプレイが中だるみすることなく、常に『鳥カード』の選別、『生息地』の埋める順、『卵』の確保数などに目を配る「テンション」が維持されるのです。



 【まとめ】
ルールそのものは決して重い部類ではありませんが、多方面に目を配りながら考えることがいっぱいあるので、やはり4ラウンドくらいが集中力の保つ丁度いい長さと言えるでしょう。
デッキ構築型ゲームなど、拡大再生産がお好きな方には文句なくオススメできます。



 『目的タイル』や『ボーナスカード』も毎回組み合わせが変わるので、リプレイ性が高いのも魅力の一つです。
特に『ボーナスカード』の内容はバラエティに富んでいますので、何度プレイしても新鮮な遊び方ができるのがいいですね。
ゲーム大国ドイツで数々の大賞を獲得したのもうなずける面白さがありますので、ボードゲーム初心者の方にもぜひ遊んでもらいたい一品です。
品薄だった市場在庫もぼちぼち解消されるみたいですよ!



 各『鳥カード』には、その鳥のちょっとしたトリビアや生息地域、翼長なども書かれていますので、ちょっとした鳥類図鑑としても楽しめるようになっています。
まだまだ拡張セットで鳥カードは増えていくようですので、遊びながら為になる教材としても利用できるかもしれませんね。

といったところで、今回のゲームはいかがだったでしょうか?
それではまた次の機会にお会いしましょう。

 

ライター紹介

松風志郎(まつかぜ しろう)
 ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
 ゲームシナリオライターだけでなくゲームのシステムデザインなども手がける。
 アナログゲームとの関わりは古く、幅広いジャンルをたしなむ。
 世界観にとっぷりと入り込めるゲームが好き。

代表作
 歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
 大戦シミュレーションゲーム「萌え萌え2次大戦(略)」シリーズ
 大戦シミュレーションゲーム「出撃!乙女達の戦場」シリーズ
 恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」
 その他多数。