ボードゲームレビュー第273回「パンデミック:迅速対応」

投稿者 : kiwistaff on

「パンデミック:迅速対応(ラピッド・レスポンス)」
制作:ケイン・クレンコ
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:2~4人
対象年齢:8才以上
プレイ時間:20分



「なんだろう、この充実感。セイの考えが手にとるようにわかる」

というわけで、みなさんおなじみまして。もしくは、はじめまして。
作家でフリーライターの、新井淳平です。
担当44回目となる今回のレビュー作品は、こちら。


『パンデミック:迅速対応〈ラピッド・レスポンス〉』。
言わずと知れた有名タイトル『パンデミック』の流れを汲む新作です。
といっても、正統後継作ではなくスピンオフタイトル。
題材こそ同じく「災害による人類危機」ですが、プレイ感覚は全く異なっています。
なお、前作をやったことがない人でもバッチリ楽しめますので、ご安心ください。
……かくいう私自身がシリーズ未プレイなので、間違いない!
 
内容は、ゲームシステムを相手にプレイヤー全員がチームとなって戦う「協力ゲーム」。
プレイヤーは、医師や専門家によって構成させた危機対策部隊の一員となって、脅威の阻止を目指します。
搭乗する専用飛行機の内部で、救命用補給物資を生成しつつ、災害現場となっている都市へ移動。
素早く物資を投下して、すぐさま次の災害都市へと向かいます。
これを繰り返し、無事に事態を収束させることができればチーム全員の勝利。
――あなたたちの活躍によって、世界は無事救われた。
となるわけですね。
逆に失敗したら、世界は滅びてしまいます。重大な任務ですよ。


勝利のために何よりも必要なのは、タイトルにも記されている「迅速な対応」。
各プレイヤーの手番中も、砂時計がノンストップで時を刻み続けます。
砂が落ち切ってしまうと〈時間トークン〉を1つ失うと共に、新たな都市で被害が発生。
判断や行動が遅いと、事態が収束するどころか、どんどん拡大していってしまうわけです。
……果たして、あなたたちは世界を危機から救うことができるのか。


【コンポーネント紹介&セットアップ】
まず卓上に、飛行機内の施設が描かれた〈ゲームボード〉を広げます。
5つの補給品に対応した部屋に、1色4個の補給品キューブ(写真)をセット。
ちなみに内容は「白:ワクチン/緑:食料/黄:電力/赤:応急医療品/水色:水」となっています。


「再生センター」という部屋にある「廃棄物トラック」のゼロ位置に〈廃棄物マーカー〉(写真右下)をセット。
〈砂時計〉と、紫色の「〈時間トークン〉(写真右上)×3個」は「本部」に置きます。
残りの6個の〈時間トークン〉は離れたところに置き、ストックにしておきましょう。
次に、ウラ面にレーダーのイラストが描かれた〈都市カード〉24枚をシャッフル。
1枚引き、書かれている都市名を確認して、ボード外周の対応位置に〈飛行機駒〉(写真左上)を置きましょう。
都市間を移動する際は、この〈飛行機駒〉が全プレイヤー共通の「プレイヤー駒」となります。
……機内の移動は個人個人だけど、都市間移動はみんな一緒なのよ。


引いたカードは箱に仕舞い、ゲームから除外します。
その後、残りの23枚から更に2枚を引いて、ボード外周の対応位置にそのカードを置きます。
例えば、「アトランタ(写真左上)」「東京(写真左下)」など。
これは、現在この都市で被害が発生していることを表します。
カードに描かれているアイコンが、事態の収拾に必要な物資となっています。
「アトランタ:5種類×1個ずつ」、「東京:赤×2個、緑×2個」といった具合。
次に、残り21枚の中からランダムに3枚をウラ面のまま引き、山札として「本部」の指定位置にセット。
この山札は〈砂時計〉の砂が落ちきるたびに1枚オープンし、ボードにセットすることとなります。
つまり、時間の経過に従って被害都市が増えていくシステム。
そして、5都市救うことができたらゲームクリア、ということですね。
……残りの18枚はもう使わないので、例によって箱に仕舞っちゃいましょう。


続いて〈役割カード〉の準備です。
全7枚あり、各プレイヤーの演じる役どころと、固有の特殊能力が書かれています。
なお、最初のプレイでは「長官」「再生利用担当者」「補給品の専門家」は除外が推奨されています。
この3枚は能力が複雑なので、ゲームに慣れてから混ぜて遊ぶようにしましょう。


さて、全員が1枚ずつ〈役割カード〉を引いて自分の役どころを決めたら、次はプレイヤーカラーを決めます。
対応する〈プレイヤー駒〉と、ゲームの流れが記された〈参照カード〉、「ダイス×6個」を持ちましょう。
そののち〈役割カード〉の右上に記されているアイコンを確認。
アイコンに対応するボード上の部屋に、自分の〈プレイヤー駒〉を配置しておきます。
あと残すところは、スタートプレイヤーの決定。条件は「最近飛行機で旅をした人」です。
こうして無事にスタートプレイヤーも決まったら――
みんな一度しっかり深呼吸をして、いざゲームを始めましょう。


【ゲームの流れ①-進行の手順】
ボード上「本部」に置いた〈砂時計〉をひっくり返すことで、ゲームスタートとなります。
手番は、スタートプレイヤーから時計回りの順に一人ずつ行います。
手番に際しての具体的な流れは、以下の通り。
 
①手持ちのダイスを全て振る。
→手番ごとに2回まで、手番中の任意のタイミングで、振り直し可能(一部でも全部でも)。
 ↓
②ダイスの出目を使用して行動する。
→機内を移動、飛行機を別の都市へ移動、補給品生成のためダイスを部屋に割り当て、部屋の効果を発動、など。
(出目に応じて、これらの各アクションを何回でも順不同に実行できます)
※使用した出目のダイスは、手元に置いた自分の〈役割カード〉の上に移動させ「使用済み状態」を表します。
 ↓
③手番の終了を宣言する。
→何もできなくなったとき、または、したくなくなったとき、に手番終了を宣言し、次のプレイヤーへ手番を移行。
 

なお、上記の流れのどこかで〈砂時計〉の砂が落ち切ると、手番は一時中断。
以下の処理を実行することになります。
 
・「本部」から〈時間トークン〉1個を除外して箱に仕舞う。
・山札の〈都市カード〉を1枚オープン。ボードの該当都市にオモテ向きに配置する。
 
――その後、〈砂時計〉をひっくり返して、手番を再開します。
ちなみに、手番中断中は、アクションの実行はもちろん、話し合いを行うことも禁止されています。
……手番中ならいくら話し合ってOKですよ。ただし、時々刻々と時の砂は落ち続けるけどね。
 
もし、砂が落ち切った際、もう「本部」に〈時間トークン〉が1個もなければ、プレイヤーたちの敗北。
その時点で、即座にゲームは終了となってしまいます。
(この際、ストックにしてある〈時間トークン〉の数は関係ありませんので、混同しないよう注意)
 
では、大まかな流れがわかったところで、アクションの一つ一つを具体的に見ていきましょう。


【ゲームの流れ②-選択アクション】
プレイヤーが取れるアクションは、大きく分けて4つ。
《移動》《飛行》《ダイスの割り当て》《部屋の発動》です。
 
●移動
自分の〈プレイヤー駒〉を、現在いる部屋から隣接する部屋に移動させる。
使用するダイスは任意選択。出目は問わず、基本的に1個消費で1部屋の移動が可能。
(特殊能力によっては1個で2部屋移動できる場合も)
 

●飛行
「出目:飛行機」のダイスを1つ消費することで、1都市移動可能。
〈飛行機駒〉を、現在地の都市に隣接する都市に移動させる。左右どちらへも進行可能。
 
●ダイスの割り当て
自分の〈プレイヤー駒〉が今いる部屋の「ダイススペース」に、1個以上のダイスを置く。
置けるダイスは、「ダイススペース」に描かれているアイコンと同じ出目のもの、のみ。
 
●部屋の発動
自分の〈プレイヤー駒〉が現在いる部屋の、固有効果を発動する。
発動するための条件は、「ダイススペース」に条件を満たすだけのダイスが設置されていること。


この《部屋の発動》の効果は、部屋の種類に応じてさらに3種に分別できます。
中でもプレイヤーがまず目指すべきは【補給品の生成】です。
……何をするにも、補給品がないと始まりません。
 
・補給品室(5種類)【補給品の生成】
部屋に対応した補給品を生成する。
部屋にストックされているキューブを「貨物室」へ移すことで生成済みを表す。
 
・再生センター【廃棄物の処理】
補給品生成によって発生した廃棄物を処理する。いわゆる回復行動。
マーカーが「廃棄物トラック」最終地点の「ドクロマス」に到達してしまうと即時ゲームオーバーとなる。
そのため、定期的にこの《部屋の発動》を実行して、回復処理をすることが不可欠。


・貨物室【補給品の投下】
生成した「補給品キューブ」を置いておく部屋。
《部屋の発動》によって〈飛行機駒〉が今いる都市に、指定されている補給品を投下する。
〈都市カード〉に書かれた補給品が全て生成完了した際には、〈飛行機駒〉をその都市へ移動させ、実行することとなる。
これによって、その都市の危機は回避され、〈都市カード〉は捨て札となる。


【ゲームの流れ③-補給品の生成】
手番開始時にダイスを振ったら、まずは作りたい補給品マークの出目を確認しましょう。
もし、まったく意図にそぐわない出目なら、適宜振り直しを実行します。
……個数は何個でもOKだけど回数は2回まで、ね。
例えば、あなたが赤駒のプレイヤーで、写真のように「電力室」にいるとします。
「電力キューブ」を作るなら移動は不要で、「黄」の出目が必要ですね。
もし出目に「緑」が多かったら、移動して隣室で「食料キューブ」を生成する、というのも手です。
《移動》に使うダイスの出目はなんでも大丈夫なので、不要な出目を消費して移動しましょう。
生成したい補給品に対応する部屋に着いたら、次は《ダイスの割り当て》です。
 
ただし、ここで気をつけないといけないのが、ボードに描かれた「ダイススペース」。
2つ以上の「ダイススペース」が1グループとしてまとめて描かれている場合――
グループ内の全スペースに、同時にダイスを置かないといけません。
……つまり、出目の同じダイスが複数必要になるわけですね。
例えば「電力」の1個目スペースは3ダイスを一気に置かないといけないので、大変。
……こういう場面で「振り直し」を活かしていきましょう。
 
スペースに置かれたダイスは、グループごとにロックされます。
「電力」は「3・1・1」というグループになっているので、例えば――
3ダイス置いた状態で《部屋の発動》を選択すると、1個の「電力キューブ」を生成できる。
3+1で生成なら、2キューブ。3+1+1で生成なら3キューブ、となるわけです。
……なるべくなら一気に生成したほうがお得。1個ずつ生成だと、6ダイス必要になっちゃうからね。
 

なお、生成を行わずに手番を終えた場合。
ロックされた分のダイスは手元には戻らず、「ダイススペース」に設置されたまま。
なので、次の手番開始時には、振るダイスの数が初めから少ない、という状態になるわけです。
例えば、まず3個をAさんが設置して、手番終了。
次のBさんが、さらに1個を設置して、その後、生成する。
こうすれば、最小限のコストである4ダイスで2キューブの生成が可能となるわけです。
……ただ、プレイ中は常に時間に追われている状況なので、コストより速さ重視になることもしばしばですが(汗)
《部屋の発動》によって役目を終えたダイスは、ここでやっと持ち主のところに戻ります。
……戻す際は使用済み状態を表す形で、〈役割りカード〉上に、ね。
 
なお、実際の流れでは、ダイスを返却する前に「廃棄物の発生判定」というものがあります。
判定は――設置されていたダイスを一度、全て同時に振る。
ここで出た出目のうち「〇」で囲まれている絵柄のダイスの数が、発生した廃棄物の数です。
……いわばダメージと考えてもいいでしょう。
ボード上の「再生センター」に置いてある〈廃棄物マーカー〉を進めることでカウントします。
もしここで、マーカーが「ドクロマス」に到達してしまったら、アウト。即ゲームオーバー。
では、廃棄物が溜まってきたとき、ゲームオーバーを防ぐためにはどうしたらいいのかというと――


【ゲームの流れ④-廃棄物の処理】
自駒が「再生センター」にいるとき《ダイスの割り当て》で、「ダイススペース」にダイスを置きます。
ただし、ここのスペースは「補給品室」と違って、1個ずつ別柄の出目を設置しなければいけません。
……同一絵柄の出目が求められる普段とは真逆だね。
ダイスが設置された状態で《部屋の発動》を行うと、ダイス数に応じた回復ができます。
3個なら1マス、4個なら2マス、5個なら4マス、マーカーをゼロ位置に向かって動かしましょう。


【ゲームの流れ⑤-補給品の投下】
廃棄物がいっぱいにならず、救うべき〈都市カード〉に描かれた分のキューブが全て「貨物室」に揃った。
そんなとき、次の行うべきなのが【補給品の投下】です。
〈飛行機駒〉を目的の都市に《飛行》させ、「貨物室」に《ダイスの割り当て》で「出目:飛行機」1個を設置。
この状態で貨物室《部屋の発動》をすると、都市への補給品投下に成功――見事その都市は救われた、となります。
なお、この達成で〈時間トークン〉が1つ手に入るので、自分たちプレイヤーも救われます。
……まあ、山札がある限り、新たな災害都市も発生しちゃうんだけどね(汗)
 
ともあれ――
砂時計に気をつけながら、これらの手順を迅速に繰り返し、どんどん災害都市を救っていきましょう。


【ゲームの終了】
ここまでにも説明済みですが、ゲームが終了するパターンは3種類。改めてまとめておきます。
①砂時計の砂が落ち切ったとき、減らすべき〈時間トークン〉が「本部」に1枚もない。
→都市の救済は間に合わず、プレイヤー全員敗北。
②「廃棄物トラック」の〈廃棄物マーカー〉が「ドクロマス」に到達する。
→廃棄物の機内汚染によって、プレイヤー全員の敗北。
③補給品を投下して都市を救った際、飛行経路に他の〈都市カード〉が1枚もなく、新たにめくる山札もない場合。
→見事、全ての災害都市救済に成功。プレイヤーたち全員の勝利です。
……みんなで喜びを分かち合いましょう!……ポジピース☆


【まとめ】
元祖『パンデミック』はじっくり段取りを組むことが重要でしたが、今作はいわば真逆。
判断と行動の速度が、なによりも肝要です。……まさに、ラピッドレスポンス。
それゆえに、おもしろさのポイントはなんといっても時間のタイトさです。
話し合うことは禁止されていないけど、話し合っている場合じゃない。
……とにかくテンパります(汗)
自分の手番が来るまでに、どう行動するかあらかじめ当たりをつけておくことが大切です。
ダイスを振ったら出目を確認して、即座にどう行動するか判断。
きっと仲間の助言もあるけれど、迷ったら負けだと思ったほうがいいでしょう。
助言を聞くならさっさと聞く。スルーするならきっちりスルー。
あとは、あまり欲張って多くの行動をこなそうとしないことが、勝利の鍵かもしれません。
まだできる行動があったとしても、手間がかかるなら、とにかく「パス」。
 
――例えば、補給品を一通り完成させて、次は投下だ、という場面。
自駒が「貨物室」から離れた部屋にいるのなら、無理に移動を目指さない。
手番は何巡しても問題ないので、パス、パス、パスと手番を回していきましょう。
投下は、「貨物室」かその近くにいる仲間に任せてしまえばいいんです。
短時間で作業をこなせるよう思考を柔軟にすることこそが、このゲームのミソ。
私は今回4人プレイで何度も遊んでみたのですが、要領を掴むまで実に3回も惨敗を重ねました(笑)
……Don't think.PASS! ……考えるな、パスしろ。時は金なりです。


そんなこんなで迎えた4回目のプレイは、ようやくの順調ぶり。
「本部」に〈時間トークン〉を1つ残した状態で、救うべき残りの都市は1つ。……これは勝ったな(ニヤリ)
勝利を確信した我々は、余裕で最後の補給品を生成しました。
よぅし、あとは投下するだけだ――そう思いながら廃棄物の処理を行っていたそのとき。
「……あっ」という手番プレイヤーの声。
ボードを見ると〈廃棄物マーカー〉がちょうど「ドクロマス」に到達……アメイジングっ!!
「――やっちまったぁぁぁっ!?」
そう、我々はいつしか勝利に目がくらみ、回復行動を疎かにしてしまっていたのです(泣)


てなわけで結局、私たちは1度もゲームに勝利することができませんでした。
ですが、このゲームには勝利した人向けに、更に高難易度のプレイも用意されています。
災害都市の数が増えたり、〈危機カード〉というもので障害が発生したり。
クリア後も何度も繰り返し遊べる嬉しい仕様となっています。

ぜひ皆さんも『パンデミック:迅速対応』で、Let's ラピッドレスキュー!
――といったところで、今回はここまで。
以上、「Desert Rose」こと新井淳平がお送りしました。ではではまた~。
【ライター紹介】
新井 淳平(あらい じゅんぺい)
「小説家」兼「フリーライター」。
某専門学校のノベルス文芸学科で授業も受け持つ。
ボードゲームのプレイスタイルは、出遅れ追い上げ型。
ダイス運は、最悪だけどドラマティック。
【著書】
『シンデレラゲーム』(オリジナル小説・映画化)
『猫侍 久太郎、江戸へ帰る』(ノベライズ小説)
『猫侍 玉之丞、争奪戦』(ノベライズ小説)