「ナヴェガドール」
制作:マック・ゲルツ
メーカー:ニューゲームズオーダー
プレイ人数:2~5人
対象年齢:12才以上
プレイ時間:約60~90分
毎度どうもこんにちは。もしくはこんばんは。あるいははじめまして。
寒くなってくると唐突に海を見に行きたくなるライターの松風です。
さて、今回ご紹介するゲームは、大航海時代をモチーフとした名作と名高い『ナヴェガドール』です!
『ナヴェガドール』は英語で言えば「ナビゲイター」の意味ですが、このゲームにおいては「エンリケ・オ・ナヴェガドール」、つまり「エンリケ航海王子」を指していると思われます。
今までに様々なメーカーが大航海時代をテーマにしたボードゲームを出してきましたが、この『ナヴェガドール』はその中でも植民地の獲得と航路の開拓に着目したゲームになっています。
このゲームの特徴は作者であるマック・ゲルツの考案した『ロンデルシステム』を採用しているという部分でしょう。
ロンデルとは「車輪」を意味し、ボード上に描かれた円形のトラックを指します。
これはプレイヤーの取れるアクションを表していて、そのラウンドに誰が何をやっているかを視覚化すると共に、次のラウンドの行動の予測も立てやすくなるという優れもののシステムです。
他のプレイヤーと競争する要素があるゲームですので、行動予測は大事ですよね。
【概要】
プレイヤーの立場はポルトガル帝国を支える裕福な交易商人。
さらなる利益を求め、未知の海域へと進出して富と栄誉を獲得していくのが目的です。
ですが、先へ先へと進むだけがこのゲームの醍醐味ではありません。
植民地から原料を獲得し、それを商品に加工して利益を上げていく必要もあるのです。
そうして得たお金は、さらなる労働者を雇ったり工場を建てて生産を効率化したりして、より大きな収入を得ていきましょう。
何より、航路開拓の過程で船はどんどん失われていきますので、これを建造するのにお金はとっても必要なのです!
なお、経済は需要と供給で成り立っていますので、商品には相場というものが存在します。
ですので、市場を操作して、高く売れるときに一気に売ることも重要になってきます。
これらのゲーム要素ががっちりと絡み合いながらも、ルールはシンプルにまとめられているのが、このゲームの名作たる所以と言ってもいいでしょう!
最終的に、ジパングまでの航路を開拓してナガサキに到着した者が出るか、全ての『建物コマ』が建築されるとゲーム終了です。
最も多くの勝利点を稼ぎ出したプレイヤーが勝者となります。
【ゲーム内容】
ゲームはまず『ポルトガル』海域から始まります。
最初に各プレイヤーそれぞれ2隻の船を保有していますが、未踏のエリアにある羅針盤の上には水色の『探索チップ』が置かれています。
この未踏の新海域に進出するには「エリア内に1隻以上を残した状態で1隻失う」という条件があります。
そうしてチップが取り除かれた海域は、安全な航路として船を失うことなく移動できるようになるのです。
先行プレイヤーがリスクを負う形ですが『探索チップ』は割と高額の勝利点になる可能性を秘めている上に、植民地へのファーストタッチボーナスとして現金収入も入ってきます。
余裕があるなら積極的に狙っていきたいですね。
終了条件の関係でつい先へ先へと進みたくなりますが、船1隻ではどうにもなりませんので、お金を払って『造船所』で船を建造しなくてはなりません。
船は未踏海域へ送り込む以外にも、植民地に立ち寄って『植民地タイル』を獲得させるために多方面に派遣したりしますので、数が重要になってきます。
なので、船を1アクションでどれだけ作れるか、建造費は払えるのかという問題が常につきまといます。
(後述しますがロンデルシステムによって、同じアクションを続けて行うのは非常に難しいのです)
船が既存の海域に着いたら『植民地』を設立することができます。
充分な数の『労働者』を保持している場合、『植民地タイル』に書かれた金額を支払うことで、現地の産物を手に入れることができます。
『植民地タイル』は同じ植民地であっても金額にバラつきが存在します。
最低額と最高額の差はおよそ3倍!
ですので、安く産物を買い入れたいなら、早めにその海域に植民地を設立しなければならないわけです。
手に入れた産物は、『市場』で売ることで現金に替えることができます。
しかし、産物を売ると一時的に需要が満たされ、市場価格は下がってしまいます。
これを上げるためには、各品物ごとに対応する『工場』を建設しておき、そこで『加工』を施すことでより良い商品に改良する必要があります。
もちろん、市場価格は他のプレイヤーとも共通ですので、一気に売り抜けようとして貯めこんだ産物を他のプレイヤーに先に売られ、思ったほど利益が出ない、なんてことも起こりえます。
また、ゲームボードの上面には大航海時代を代表する歴史上の人物たちが描かれています。
左から「アルフォンソ・デ・アルブケルケ」、「ペドロ・アルヴァレス・カブラル」、「バスコ・ダ・ガマ」、「バルトロメウ・ディアス」、「フランシスコ・ザビエル」となっています。
「インド総督」アルブケルケや「ブラジル到達者」カブラルは少しマイナーですが、他の3人は教科書でもおなじみの偉人たちです。
彼らに『労働者』を1体捧げることで、頭上に描かれたアイコンに対応する『恩恵タイル』と呼ばれるものがもらえます。
これを『恩恵』と呼びます。
『恩恵タイル』は、自分のプレイヤーボードの対応するマスに置くことで、即時の現金収入を得るばかりでなく、最終得点計算時の倍率を上げることができるのです。
他のアクションで手一杯になりがちな中、直接的に有利になるわけではありませんが、得点を伸ばすには欠かせない要素と言えるでしょう。
ゲームが進むと、どうしても1手番で出来ることを増やさなければならない場面が出てきます。
例えば船の建造や労働者の雇用、産物の加工などです。
これらは『造船所』や『教会』、『工場』を建設することで一度に増やせる数を大きくしていくことが出来るのです。
一応、余分にお金を払うことで獲得できる数を増やすことは出来るのですが、限られたリソースをやりくりしなければならない以上、余分な出費は出したくないでしょう。
ただし、建設にも決まった数の『労働者』が必要になってきます。
手番をかけて少しずつ増やすか、余分に金を払って一気に増やすか、あらかじめ建物に投資しておくかはプレイヤーの戦略に委ねられています。
ちなみに建物も勝利点にカウントされますので、建設しておくだけでも損はありません。
こうした行動は、先にも書きました『ロンデルシステム』によって運用されます。
ロンデルには、
●Sailling(航海)……船を移動させる
●Workers(労働者)……『労働者』を雇用する
●Market(市場)……『市場』で物を売る(加工する)
●Colony(植民地)……『植民地タイル』を得る
●Privilege(恩恵)……『恩恵タイル』を得る
●Ships(建造)……船を建造する
●Bildings(建設)……『工場』や『教会』、『造船所』を建築する
の7種類のアクションが書かれたマスがあります。
『市場』だけは2マスありますので、合計8マスのトラックが存在します。
この円形トラックの上を自分のコマを時計回りに移動させることでアクションを選んでいく事になります。
プレイヤーは手番が来たら、1~3マスまでの間で任意のマスに進むことができます。
その場に静止して前回と同じアクションを取ったり、反時計回りに進むことはできません。
これによってお互いの行動予測が立てやすいのが『ロンデルシステム』のメリットの一つです。
予測を裏切って余分にマスを進めることも実は可能です。
ですが、それには進めるマス1つごとに盤上にある船を1隻、コストとして支払わなければいけません。
建造したばかりで『ポルトガル』にある船ならともかく、先に進んでいた船を失うのは金銭だけでなく以前行った手番をも失うことになるわけで、かなり大きな損失と言えるでしょう。
それと引き換えにしてでも取りたい行動であるのかどうか、よくよく考える必要があります。
あるいはそれを見越して『ポルトガル』に船を貯めておく、というプレイもアリかもしれません。
いずれにせよ、他のプレイヤーに先んじつつ、有利を取っていくためには2手3手先を読む力が試されるでしょう。
【まとめ】
複雑な要素が絡み合うゲームですが、プレイ感覚はそこまで重くありません。
基本的には「先に進む」か「お金を稼ぐ」かにプレイが集約されていく印象があります。
どんなアクションにもリスクとリターンがつきまといますので、それを見極める目を養うにはうってつけのゲームと言えます。
ヘビーゲーマーはもちろんのこと、初心者の方も尻込みせずにヘビーゲームの入門編として遊んでみてはいかがでしょうか?
名作は名作と呼ばれるだけの所以があると思わされる面白さ、奥深さが味わえますよ!
といったところで、今回のゲームはいかがだったでしょうか?
それでは、また次の機会にお会いしましょう。
ライター紹介
松風志郎(まつかぜ しろう)
ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
ゲームシナリオライターだけでなくゲームのシステムデザインなども手がける。
アナログゲームとの関わりは古く、幅広いジャンルをたしなむ。
世界観にとっぷりと入り込めるゲームが好き。
代表作
歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「萌え萌え2次大戦(略)」シリーズ
大戦シミュレーションゲーム「出撃!乙女達の戦場」シリーズ
恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」
その他多数。