「インヴィクタス・ザ・オーディン」
制作:内藤壮哉
メーカー:ヘムズユニバーサルゲームズ
プレイ人数:2人
対象年齢:13才以上
プレイ時間:5-30分
「西に東に南ときて……今、ここに北欧」
というわけで、みなさんおなじみまして。もしくは、はじめまして。
作家でフリーライターの、新井淳平です。
私の担当するレビューは、これで45回目となります。
そんな今回は、11月23、24日開催の「ゲームマーケット2019秋」にて発売の新作を、一足お先にご紹介。
『インヴィクタス・ザ・オーディン』。
デッキ構築型の対戦カードゲーム『インヴィクタス』シリーズの4作目です。
レビューでもたびたび取り上げているため、ご記憶の方も多いのではないでしょうか。
今年春のゲームマーケットで3作目が発売されて以来、久々の新作ですね。
さて、そのモチーフですが、タイトルにもなっている『オーディン』を主神とする神話伝承の地。
――そう、「北欧」です。
1作目『キング』が西洋、2作目『将軍』が東洋、3作目『ファラオ』が南部。
ここに本作が加わり、ついに四方の地域が出揃ったことになるわけですね。
今回も単品プレイのみならず「多国籍軍ルール」で先行作と混ぜて遊ぶことができます。
もちろん「連合軍ルール」での4人対戦にも対応。
末永く多彩な遊び方が用意されているわけですね。……アメイジング!
では、本作の目玉となる【兵士カードの種類】をご紹介する前に――
まずは【基本ルール&ゲームの流れ】を確認しておきましょう。
初見の方はじっくりと、ご存知の方はさらりと、どうぞ☆
【基本ルール&ゲームの流れ】
●デッキ構築
まずは将棋でいう「王将」=〈オーディン〉カードを決定します。
パラメータの異なる全5枚(+プロモ1枚)を、双方のプレイヤーに2枚ずつランダム配布。
それぞれ内容を見て、採用する1枚を確定させます。
……獲物を必ず貫く神話の槍「グングニル」を意識してか、プロモの攻撃範囲は一直線にどこまでも!
次は、採用した〈オーディン〉のパラメータを加味したうえで、デッキに採用する〈兵士カード〉20枚を決めます。
同梱されているのは、5種類10枚ずつ×プレイヤー2人分=100枚。
具体的なカードの内容は、後の項目で細かくご紹介します。
●セットアップ
採用する20枚が確定したら、それをシャッフルして山札に。その後、選んだ〈オーディン〉を相手に公開。
ジャンケンなどで先攻後攻を決めたら、両者山札から3枚をドロー。
ここに〈オーディン〉を加えた4枚が初期手札となります。
なお、ドローした3枚が不服なときは1度だけ引き直しも可能(詳細はマニュアル参照)。
先攻後攻交互に、次の順番で自分の場に手札カードをセットしていきます。
1[戦場]、2[待機列]、3[王国]。残りの1枚は手札として持ったまま、ゲームスタートです。
●対戦
手番は以下の①~③のフェイズを先攻プレイヤーがまず行い、その後、後攻も同様に手番を行っていく流れ。
①ドロー
手番プレイヤーは山札から1枚カードを引いて手札に加える。
その後、自分の[戦場]のカード全てを縦置きにする。
これは行動済みを表す横置き(タップ状態)になっているカードを、行動可能状態にする作業(アンタップ化)。
↓
②「進軍」or「攻撃」
1ターンに実行できるのはどちらか一方のみ(どちらも実行しないことも可)。
進軍:[待機列]からカード1枚を[戦場]に出すアクション。[待機列]にカードがなければ手札から出すことも可能。
攻撃:[戦場]の任意のカードをタップさせ、任意の敵カードを指名してダメージを与えるアクション。
(攻撃は、アンタップのカードがある限り1ターンに何度でも実行可能)
・敵の体力ちょうどのダメージを一撃で与えると「捕獲」。倒した敵カードを自分の[王国]に置きます。
・敵の体力以上のダメージで倒した場合や、二撃以上で倒した場合は「破壊」。敵カードは、敵[墓場]に置きます。
※なお、ターンが変わるとそれまで受けていた蓄積ダメージはリセットされる。……討ち取るなら1ターン中に。
※「攻撃」ではなく「後方支援」の効果で捕獲条件を満たしても、「捕獲」にはならず「破壊」になる。
↓
○後方支援
なお、②の際には、手札の〈兵士カード〉を[待機列]に置くことで、その「後方支援能力」を発動使用できます。
これから攻撃予定の〈兵士〉の攻撃力を強化したり、「攻撃」行動とは違う形で敵兵にダメージを与えたり。
便利な効果がいろいろあるので、適宜活用していくようにしましょう。
↓
〇徴兵
また、敵の②の際に、攻撃などによって自分の[戦場]の〈兵士カード〉が0枚になってしまうことがあります。
そのとき発生する処理が、この「徴兵」。
即座に自分の[待機列]から、順番に2枚を取って[戦場]に配置します。
もし[待機列]に1枚しかなかった場合は、自分の[王国]からも1枚[戦場]に出します。
もし[待機列]に0枚だった場合は、[王国]から2枚を[戦場]に。
なお、[王国]から出す際は、捕獲した敵の〈兵士カード〉を選ぶことも可能です。……まるで将棋のように。
無事[戦場]に2枚カードが出ている状態にできたら、敵の②を再開します。
[待機列]と[王国]からカードを持ってきても[戦場]が2枚に満たなかった場合は「滅亡」。
――即敗北となってしまうので、気をつけましょう。
↓
○入国
これは自分のターン中、いつでも任意で行えるアクション。ただし1ターンに1度だけ。
手札の〈兵士カード〉1枚を自分の[王国]に置くことができます。
これは「勝利条件:建国」による勝利を目指すための行動。
[待機列]や[戦場]が手薄になってしまうリスクはありますが、重要な選択肢の一つです。
↓
③手札調整
もし②を終えたところで手番プレイヤーの手札が6枚の場合、手札から1枚選び[王国]に置く(「入国」処理)。
ターン終了を宣言し、手番交代。このターンに受けていたダメージはここで全てリセットされます。
また、補正されていた攻撃力は全て元の状態に戻ります。
【ゲームの終了】
勝敗の決着パターンは以下の4種。
●追放:一方の〈オーディン〉が「破壊」or「捕獲」されたとき。「破壊」または「捕獲」を達成したプレイヤーの勝利で、ゲームセット。
●建国:一方が[王国]で4ポイントを獲得したとき。ゲームはその瞬間に終了。4ポイントをGETしたプレイヤーの勝利となります。
●滅亡:「徴兵」を行わなければならないプレイヤーが、[戦場]にカードを2枚置けなかったとき。徴兵できなかったプレイヤーの敗北で、ゲームは終了となります。
●終戦:先攻プレイヤーのターン開始時に山札がないとき。通常のターンは行わず、[王国]でのポイントが多いほうの勝利で、ゲーム終了。
同数なら、[王国]にあるカードの枚数が多いほうの勝ち。
それも同数なら、[墓場]にある枚数が少ないほうの勝ち。
それさえも同数なら、ついに引き分けとなります。……ポジピース☆
【兵士カードの種類】
お待たせしました。この項こそが、当レビューの肝です。
インヴィクタス・フリークの皆さん、ぜひご注目!
※()内はタップ時の体力。「→」表記は「後方支援」として使ったときの効果です。
なお〈オーディン〉の後方支援は、以下の5種類のどの効果としても使用可能です。
●ヴァイキング:《青》近接戦闘・火力系
=攻撃力3/体力2(1)
→自分のカードの攻撃力を、自分の戦場内の横向きカードの枚数分だけ+する。
これは過激な支援効果。
最初に攻撃するカードこそ「+0」ですが、2発目のカードは「+1」、3発目は「+2」。
攻撃すればするほど、どんどん攻撃力が鰻上りです。
効果はターン中持続し、自分の[戦場]のカード全てに影響。……なんという戦闘民族ぶり。
なお、この支援効果は多重掛けも可能です。
つまり、1ターンに2回使うとタップ1枚で「攻撃力+2」、タップ2枚で「+4」と激熱な破壊力に!
「追放」や「滅亡」を狙う戦術には持ってこいの効果と言えるでしょう。
●ジャイアント《緑》守備・ガード系
=攻撃力2/体力3(3)
→後方支援を持たない。
まさかの後方支援なし! これは驚きです。
しかし、そんなリスクも納得させられるパラメータの高さ。
素で2の攻撃力といい、安定の3体力といい、[戦場]の守り手として申し分ありません。
ただ、ネックとなるのは、支援がないため[待機列]に置くことができないこと。
[戦場]に出すためには、基本的に手札から出さなければいけないわけです。
そのためには、[待機列]にカードがない状態なのがルール。
これは、《紫》の「ブロック効果」などで支援戦が過熱する後半には厳しい条件です。
また、本来《緑》の後方支援は、攻撃をガードする効果を持つもの。
それが存在しないため、本作は従来以上に、殴り合いの様相を呈することになるわけです。
しかし、そうなってこそ〈ジャイアント〉の高パラメータが活躍するというものでしょう。
……「多国籍軍ルール」で〈ジャイアント〉を使うのは、手練れの証か、それとも無謀か。
●アルバリスト《赤》遠距離射撃・砲撃系
=攻撃力1/体力2(1)
→相手の兵士カードに、自分の待機列にあるカード枚数分のダメージを与える。
※[待機列]の枚数は、使用するために置いたこのカードを含めた状態でカウントする。
[戦場]での活躍はいまいち心許ないパラメータ。
ですが、後方支援の火力は侮るべからずです。
[待機列]に何もない状態で使っても、使った〈アルバリスト〉1枚の分で、ダメージ1。
……決して空打ちにならないのが嬉しいところですね。
[待機列]に置けるカードの最大枚数は5枚。
つまり、対象は兵士のみに限定されるものの後方支援で最大5ダメージの火力が出せる。……なんというヤンチャぶり。
王将は狙えずとも、兵士を次々と仕留める兵士キラー、恐るべし!
……これは、せっかく場に出したジャイアントもイチコロではないか。
と思ったそこのあなた。お待ちください。
とにかく、次の兵種を見てみましょう。
●バード《黄》アシスト・テクニカル系
=攻撃力0/体力2(2)
→相手の待機列のカードを1枚、相手の戦場の空いているマスに置く。
体力が、タップ・アンタップに関わらず安定の2。
でもその代わりか、攻撃力はまさかのゼロ。
しかし、戦闘で役立たずかというと、そうでもないんです。
なぜなら、〈ヴァイキング〉の後方支援能力があるから。
タップカードの枚数によっては、攻撃力2にも3にも、それこそ5にもなるわけです。
また、広い射程を持つ点も〈ヴァイキング〉の後方支援との食い合わせの良さを物語っています。
つまり、ダメージを与えられない空振りでも、打つだけ打てば〈ヴァイキング〉の支援効果を増大できるんです。
それに加えて、当のこのカード自身の後方支援能力――
敵[待機列]のカードを強制的に[戦場]へ駆り出すことができるわけです。
これにより、脅威となる敵の〈アルバリスト〉の支援ダメージは減退。
そして、自分の場の〈ヴァイキング〉や〈ジャイアント〉で殴りたい相手を、無理やり引っ張り出せる。
……吟遊詩人、恐るべきアシストぶり。
あれ? でも相手の[待機列]を0枚にしたら、手札から〈ジャイアント〉を出されちゃうかも。
――そう思ったあなた。さあ、次の兵種です。
●ドルイド《紫》アシスト・ブロック系
=攻撃力1/体力1(1)
→相手の後方支援を防ぎ、相手の墓地にあるカードを1枚、相手の待機列に置く。
※相手[墓地]にカードがない場合、この後方支援は使用できない。
※〈ドルイド〉の後方支援は、相手に防がれない。
《紫》にありがちな凡庸パラメータ。ですが、やはり《紫》の真価は後方支援です。
ブロック能力自体は従来シリーズ同様ですが、追加の能力が一風変わっています。
なぜなら、せっかく討ち取ったはずの敵兵を、相手の[待機列]に戻してしまうものだから。
これはもちろん、相手〈ジャイアント〉の登場を防ぐ手立てでもあります。
しかし、それのみならず、一度「破壊」してしまった相手を「捕獲」しなおすチャンスでもあったり。
そんなときには、また〈バード〉の支援効果の出番ですね。
……そして、相手[待機列]を増やす際には〈アルバリスト〉の後方支援が飛んでこないか、くれぐれもご注意を。
また、相手[墓地]をうっかり0枚にしてしまうと、このブロック効果自体使えなくなってしまうので、そこも注意。
【まとめ】
ここまで見ていただいて、もうおわかりでしょう。
今作の〈兵士カード〉たちは、見事なほどのクセモノぞろいです。
また〈オーディン〉のパラメータが従来の「王」に比べて若干高めな点や、《緑》の「ガード支援」がない点など――血の気が多い、とも言えるかも。
……さすがは北方の地を統べる猛者たち、といったところでしょうか(汗)
《赤》《黄》《紫》の効果は、3すくみとも取れる形を成しています。
そして、一見無関係に見える《緑》も、登場条件の面でそこに絡んでくる。
また、《青》の〈ヴァイキング〉の後方支援を活かすためには、より多くの攻撃を仕掛ける必要がある。
つまり[戦場]に多くの兵を出すことが要件で、さらには攻撃範囲が広いほうがいい。
こういった面で、全ての兵種が〈ヴァイキング〉とも絡んでいるわけです。
行動として重要になるのは、まず敵兵を1体「破壊」すること。
本来は「勝利条件:王国」に直結するため、「破壊」より「捕獲」を目指すほうが順当なのですが――
戦術として重要な役割を果たす《紫》の「ブロック効果」を使用可能にするため、敵[墓地]にカードがないといけない。
そのため、まず「破壊」をしておかないと、敵〈アルバリスト〉の支援で嬲り殺されてしまう危険が。
今回のプレイで私は、初手で普通に攻撃すれば「捕獲」できる相手を、わざわざ自分の〈アルバリスト〉支援でひと削り。
その後、攻撃することで「破壊」に持って行く、ということをしました。
一見、無駄にも見える行動ですが後々のことを考えると、実際はこれが重要になるわけです。
……先行作のプレイ経験がある人なら、「ガード」も「ブロック」もないことがいかに無防備で危険かわかるはず。
〈ドルイド〉の「ブロック効果」使用のためには、敵[墓地]の枚数にも常に気を配っていないといけません。
――今回、私は例によってやらかしました。
〈ドルイド〉の支援は、使うたびに敵[墓地]の枚数を減らしもしてしまう。
ということは、単純計算で「破壊数以上のブロックはできない」ということ。
重要な場面で「ブロック」が使えなくなり、敵〈ヴァイキング〉の支援を止められず――
結果、敵の総攻撃により、大立ち回りしていた〈オーディン〉を討ち取られ「追放」での敗北を期してしまいました(泣)
今回のプレイは、本作単品での「基本ルール」プレイのみでした。
本当は「多国籍軍」や「連合軍」もやりたかったけれど、そこは時間の関係で断念(汗)
……さらなる楽しみは後日にとっておくということで、ね。
と、話を戻しまして――
本作単品でのプレイで抱いたのが「まるで縛りプレイのようだな」という感想。
正直、先行3作品より難易度が高いです。
初めて『インヴィクタス』シリーズを遊ぶという人はやはり、まず1作目の『キング』から入るのがオススメ。
でも、TCGなどに慣れていてハードモード希望の人は、本作からの入門もぜひ☆
一方、先行3作品で遊び慣れていた人にも、新作の登場は朗報。
『オーディン』がラインナップに加わったことで、「多国籍軍プレイ」の戦局がまた変わることになったわけです。
『インヴィクタス』は、1作のみでのプレイ感も奥深く充実しています。
しかし、次々にシリーズがリリースされ楽しみが拡充されていくのが、また大きな魅力ですね。
――といったところで、今回はここまで。
ぜひ皆さんも『インヴィクタス・ザ・オーディン』で、Let'sラグナロク!
以上、「死に際の騎士」こと新井淳平がお送りしました。ではではまた~。
【ライター紹介】
新井 淳平(あらい じゅんぺい)
「小説家」兼「フリーライター」。
某専門学校のノベルス文芸学科で授業も受け持つ。
ボードゲームのプレイスタイルは、出遅れ追い上げ型。
ダイス運は、最悪だけどドラマティック。
【著書】
『シンデレラゲーム』(オリジナル小説・映画化)
『猫侍 久太郎、江戸へ帰る』(ノベライズ小説)
『猫侍 玉之丞、争奪戦』(ノベライズ小説)