ボードゲームレビュー第275回「クランク!」

投稿者 : kiwistaff on

「クランク!」
デザイナー:ポール・デンネン
メーカー:アークライトゲームズ
プレイ人数:1~4人
対象年齢:12才以上
プレイ時間:約30~60分



 毎度どうも、こんにちは。ライターの松風です。
さて、今回ご紹介するゲームは『クランク!』です。
パッケージにはデッキ構築ゲームと書いてあり、ドラゴンと冒険者のイラストが描かれてます。
ドラゴンと冒険者の組み合わせのパッケージアートって、なんか無条件にワクワクしてしまうのは筆者がオールドゲーマーだからでしょうか。



 デッキ構築ゲーというと名作『ドミニオン』を思い浮かべる方も多いでしょう。
しかしこのゲームは一見すごろくのようなゲームボードが存在するあたりが特徴的です。
一体どんなゲームなんでしょうね?

 タイトルにもなっているクランクとは、「不注意な物音」のこと。
このゲームでは、プレイヤーは泥棒となってドラゴンのねぐらに侵入し、お宝である『アーティファクト』をゲットして地上に生還するのが目的です。
どうやらこのゲームのプレイヤーたちは冒険者ではないようですね……。(マニュアルにも「冒険者」ではなく「泥棒」としっかり書かれています)
なので、残念ながらダンジョンでレベルアップしてドラゴンと正面切って戦う──というタイプのゲームではありません。
こっそりと侵入し、お宝をゲットしたらそそくさと逃げ帰ることになります。
しかし、そこでうっかり物音を立ててしまうと……まぁどうなるかはだいたい想像付きますよね?

 てなところで早速ゲーム内容に入ります。
プレイヤーに渡されるのは『初期デッキ』10枚と、各色に分けられた『ポーン(プレイヤーコマ)』、『クランク!キューブ』を一揃いのみ。
ゲームボード上の所定の位置にトークンやカード類を配置したら、『ドラゴンバッグ』に黒い『ドラゴンキューブ』を全て入れておきます。
なにやら不吉な予感を感じさせる袋ですが、今は気にしないでおきましょう。



 それから自分の『ポーン』をダンジョンの入り口近くに置いて、シャッフルした『初期デッキ』から5枚を手札にします。
あとはスタートプレイヤーを決めて、そのプレイヤーから順に時計回りで自分の色の『クランク!キューブ』を3個、2個、1個と『クランク!エリア』に置いていけば準備完了です!



 初見で悩みそうなひねったセッティングは特に無いくらいの分かりやすさですね。

 それではまずはデッキに入っているカードの読み方をご説明しましょう。
手番が回ってきたら、プレイヤーは手札にあるカードを好きな順番で好きなだけオープンして使用することができます。



 ここで主に参照するのはカード左上に描かれたアイコンです。
青い四角形に数字が入っているのが『スキル』です。
手番中に出した全てのカードの『スキル』を合計したものが、次のカード購入のためのコストになります。
靴のマークがついた黄色いアイコンは『ブーツ』と呼ばれ、ダンジョンのマスを何歩動けるかの移動力を表します。
剣のマークの赤いアイコンは『ソード』と言い、モンスターカードを撃退するための攻撃力になります。
『ブーツ』と『ソード』はアイコン1個で1歩、あるいは1攻撃力と考えてください。
多くのカードはこれら3種のアイコンを1~2種は持っていますが、特殊効果を発揮させるアイテムのようなカードには付いてない事が多いです。



 手番中、プレイヤーは手札から出したカードの『スキル』合計値を使って『ダンジョン・ロウ』と呼ばれるカード列からカードを購入できます。
カード右下に書かれた数字はそのカードの購入に必要な『スキル』の数を表し、カード右上にある緑色のアイコンは勝利点を表しています。



 獲得したカードは、いったん自分の捨札置き場に置かれ、リシャッフルして手札補充するタイミングで手に入ってきます。
同様に、『ダンジョン・ロウ』に並ぶモンスターカードは、必要な数の『ソード』を使って撃破することで、報酬を得ることができます。



 手札を全て使い切っても、手番の最後に山札から5枚補充できますので、手札切れの心配はありません。
ただし使わずに余らせてしまったアイコンはその手番だけで消えてしまいますので、なるべく上手く使い切りましょう。
時には手札を残すという選択も大事ですよ!


 また、カードには様々な条件で「+○クランク!」と書かれている場合があります。
そのカードを使う、あるいは入手することでうっかり音を立ててしまった、という事を表しているわけです。
これが出たら自分の色の『クランク!キューブ』を指定された数だけ『クランク!エリア』に置かねばなりません。
その結果何が起こるかは後のお楽しみに。



 ゲームボードは、ダンジョンの入口がある比較的安全な上層階と、ドラゴンの眠る危険な『深層階』に分かれています。
入口のある上層階はまだチュートリアル的な感じですが、一方通行や鍵のかかった部屋などもあり、行きはともかく帰り際のルート選択が悩ましいものになっています。
部屋と部屋をつなぐ道に足あとマークがついていれば、『ブーツ』1個を余分に払わねば通れません。
同様に、モンスターの顔マークがあれば軽い戦闘が発生し、『ソード』1個を提示するか、無ければダメージを受けることになります。
錠前のマークがあれば、『マスターキー』というアイテムがないとそもそも通れません。
そしてこれらの障害は、先に進むほど組み合わさって描かれている場合が出てきます!



 『深層階』に入ると、奥に行くほど高得点な『アーティファクト』が配置されていますが、そこにたどり着くためには様々な困難を越えて行かねばなりません。
当然、それはドラゴンに察知される危険との隣り合わせになるでしょう!
しかし、悪いことばかりではありません。



 『深層階』には(何故か)『マーケット』があり、ダンジョン攻略にぜひとも欲しいアイテムが売られているのです。
売られているのは、追加の『アーティファクト』を持てるようになる『バックパック』、鍵のついたルートを通過できるようになる『マスターキー』、高い勝利点を誇る『王冠』の3種類。
価格は一律7ゴールドで、ゴールドはモンスターとの戦闘で手に入ることがあります。



 さて、各プレイヤーの手番が終わったとき『ダンジョン・ロウ』に空きがあれば6枚になるように山札から補充するのですが……。
補充されたカードの右側に『ドラゴンマーク』がついていたら、残念!
あなた方はドラゴンの気を引いてしまいました!



 これが出ると、即座に『クランク!エリア』に置かれた『クランク!キューブ』を全て『ドラゴンバッグ』に投入します。



 そしてボード下部にあるドラゴンの『怒りトラック』にある『ドラゴンコマ』がどこまで進んでいるかをチェック!



 そこに描かれたキューブの個数分だけ、『ドラゴンバッグ』からランダムにキューブを引きます。
黒いキューブが出たらセーフ! 誰もダメージを受けずに済みます。
しかし自分の色のキューブが出たら……そのプレイヤーはダメージを受けてしまいます!
キューブは『ヘルスメーター』と呼ばれる負傷トラックに置かれることでダメージを表します。
もちろん複数個出たらその数だけダメージを受けることになります!



 『ヘルスメーター』は最大10個までしかありませんので、誰でも10点ダメージを食らえば脱落……ゲームオーバーです。
しかしまだ希望は残っています。
もし、あなたが脱落した時『アーティファクト』を所持しており、脱落したのが上層階だった場合、あなたは街の人々に助け出され無事生還できます!
一応『ヘルスメーター』の回復手段もあるにはありますが、本当に限られていますので、負傷を気にせずズンズン進む脳筋プレイはオススメできません。
更に言うならば、黒いキューブは一度出たらバッグには戻りませんし、『怒りトラック』が進むほど一度に引くキューブの数も増えていきます。
つまりゲームが進めば進むほどに危険度は加速的に増していくというわけですね!


 脱落することなく、見事『アーティファクト』を携えて入り口まで戻ってきたプレイヤーには、勝利点20にもなる『制覇トークン』が与えられます!
最終的に、得たカードや『アーティファクト』その他のお宝についている勝利点と、所持しているお金(1ゴールド1勝利点に換算)を合計し、最も高い点数のプレイヤーが「天下の大泥棒」の称号を得て勝利します。

 『ドミニオン』を始めとするデッキ構築ゲームは、獲得するカードの方向性によって様々なデッキを組めるのが面白さに繋がっているゲームです。
反面、カードの効果などを熟知していないとどういったデッキを組めばいいかが分かりにくく、初心者にはハードルの高いゲームでもありました。
しかし、この『クランク!』は「ドラゴンのねぐらからお宝を奪う」という明確な方向性が提示されているので、何を目指すべきかがとても分かりやすくなっています。



 また、他のデッキ構築ゲーでは「より完成度の高いデッキを作るためにゲーム展開を引き伸ばす」というプレイをしばしば目にすることがあります。
ですがこのゲームではカードがめくられる度にドラゴンアタックが発生する可能性があるため、そういう「場が停滞する」局面が起きにくいのも良い点ですね。
数々の緊張感の演出によってゲームがダレることなく、結果的にプレイ時間の短縮にも繋がっているので、非常によく練られたシステムと言えるでしょう。
ボードを裏返せば高難易度の「裏面」が用意されているのもゲーマー心をくすぐります。

 すこし変わり種ではありますが、手軽にワイワイ遊べるデッキ構築ゲーとして初心者からベテランまで広くオススメできる良作です。
海外でも結構ヒットした作品らしく、拡張カードセットなどが色々出ているみたいですので、ぜひ日本語版でも今後の展開に期待したいですね!

 といったところで、今回のゲームはいかがだったでしょうか?
それではまた次の機会にお会いしましょう。

ライター紹介
松風志郎(まつかぜ しろう)
 ゲーム制作チーム「Team・Birth-tale」所属。
 ゲームシナリオライターだけでなくゲームのシステムデザインなども手がける。
 アナログゲームとの関わりは古く、幅広いジャンルをたしなむ。
 世界観にとっぷりと入り込めるゲームが好き。

代表作
 歴史シミュレーションゲーム「三極姫」シリーズ
 大戦シミュレーションゲーム「萌え萌え2次大戦(略)」シリーズ
 大戦シミュレーションゲーム「出撃!乙女達の戦場」シリーズ
 恋愛アドベンチャーゲーム「はち恋」
 その他多数。