ボードゲームレビュー第278回「アンクォール」

投稿者 : kiwistaff on

「アンクォール」
作者:フランク・クリスティン / グレゴワール・ラージ / セバスティン・ポーコン
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:2~4人用
対象年齢:10歳以上
プレイ時間:約30分



みなさんおなじみまして。もしくは、はじめまして。
作家でフリーライターの、新井淳平です。
担当46回目となる今回のレビュー作品は、こちら。


『アンクォール』。
古代エジプトの市場を題材としたゲームです。
リソース管理やタイル配置、セットコレクションといった要素を持つ小品――
ルールもわかりやすく、サクッと遊びやすい内容となっています。
 
プレイヤーはまず、魚や炭などの資源や、特殊効果のある〈アンクトークン〉をGETしていきます。
手持ち資源が潤ったら、市場に並んだ任意のタイルを購入。自分の場に並べていきます。
基本的に、同じ色か同じ動物を2枚以上繋げて並べることが、点数GETの方法。
また、同様に5枚以上隣接させることで3勝利点となる〈ボーナストークン〉が得られます。
ゲームは、誰かが13枚目のタイルを設置すると終了に向かいます。
手番数が同じになるようにプレイして、得点計算。最多得点獲得者が、優勝となります。


【コンポーネント紹介&セットアップ】
まずは卓上に〈価格ボード〉をセットします。
次に15枚の〈価格マーカー〉をシャッフルし、ボードの穴にランダムに嵌め込みます。
マーカーには5色あり、魚や織物など5種類の資源がそれぞれに描かれています。
手番では、このマーカー分の資源を支払うことで該当マスの〈タイル〉を購入ができる、ということ。
……遊ぶたびに価格表が変化するわけですね。


55枚ある〈タイル〉はシャッフルして、ボード脇に2つの山にして設置。
どちらか一方の山の上から6枚をオープンして、ボードの下に並べます。
ピラミッド型の〈ボーナストークン〉はまとめてストックに。
6色のトークン類もそれぞれ、プレイ人数に応じた使用枚数をまとめてストックにしておきます。
今回は4人で遊んだので、1種につき6枚ずつ、でした。
――これでセットアップは完了。実に簡潔ですね。
ジャンケン等でスタートプレイヤーを決めたら、さっそくゲームスタートです。


【ゲームの流れ】
プレイヤーが手番に行える基本アクションは2種類。
「A:トークンを入手する」と「B:タイルを購入する」です。
手番になったら、どちらか一方を選んで実行しましょう。
 
●A:トークンを入手する
ストックのトークンから3つを入手します。同じ種類でも構いませんが、制約が2つ。
ターン終了時に6枚以上の〈資源トークン〉を持っている場合、5枚になるよう任意の物を捨てるはめになります。
同様に、〈アンクトークン〉は3枚以上だと2枚に調整することになります。
……〈アンク〉の使用法と効果については、のちほどご説明しますね。


●B:タイルを購入する
手持ちの〈資源トークン〉を支払って、場に並んでいる〈タイル〉の中から欲しい〈タイル〉を購入します。
〈タイル〉に対応するマスに嵌まっている〈マーカー〉の内容が、支払う価格。
……写真の一番右のマスなら「緑黒白が1枚ずつ」計3枚ですね。
 

買った〈タイル〉は、すぐに自分の場に設置することになります。
すでに設置済みの〈タイル〉がある場合は、必ずどれかと隣接するように置かないといけません。
……隣接扱いになるのは縦横方向のみ。斜めはダメです。
 
ここで大事なのは、〈ボーナストークン〉を得られる形を目指して設置していくこと。
・同色5枚以上が隣接
・同動物5枚以上が隣接
つまりこの2種類です。
並びが達成されたら、即座にストックから〈ボーナストークン〉を受け取りましょう。
ちなみに、5枚から先は何枚繋げてももうボーナスは入りません。
……ボーナスで大量得点を狙うなら、6枚以上にならず5枚セットを複数作るのが大切です。
 
また、特別なケースとして2段目に設置することができる場合があります。
条件は次の通り。
・4枚の〈タイル〉が正方形に並んでいること
・4枚のうち最低1枚が、これから上に設置する〈タイル〉と同色であること
この2つの条件を満たすとき、4枚の交差地点――2段目に〈タイル〉を置くことができます。
2段目の〈タイル〉は下の4つの〈タイル〉と隣接している扱いになるので、得点にも繋がります。
なお、こうして2段目に設置するときには、〈タイル〉入手時に支払う〈資源トークン〉が1枚緩和されます。
価格が「緑黒白1枚ずつ」なら、どれか1枚は払わなくていい。計2枚で買えるということ。
……これはお得ですね。なるべく2段目に設置できるようにするのも、勝利への近道と言えそう。
 

――さて。
手番が進んでいくと、必然的に場の〈タイル〉が少なくなってきますね。
選択肢が少ないと、欲しい〈タイル〉がない、という事態も発生します。
そんなとき、いよいよ出番となるのが〈アンクトークン〉です。


これを基本アクションの前か後に1枚支払うごとに、以下の追加アクション「a」か「b」1つを実行できます。
ただし、基本アクションで入手したばかりの〈アンク〉を即使う、ということはできないので注意。
 
a)タイルの更新
2人プレイの場合、まず場に並べられた〈タイル〉のうち一番左の1枚を強制的に取り除きます。
3~4人の場合は、この行程は無視しましょう。
次に、場の残りの〈タイル〉を左寄りに詰めます。……価格が変わるわけですね。
続いて、2つあるタイル山のうちどちらか1つを選択。
その上から、場に空いているマスへ左から順に〈タイル〉を補充します。
もし選択した山が尽きたときは、残りの山から補充を続けましょう。
……欲しい〈タイル〉が場にないときは、こうして〈アンク〉を使って〈タイル〉を更新するわけですね。


b)自分のタイル1枚を移動
すでに自分の場に設置した〈タイル〉を、設置し直すことができます。
あとからプレイプランを変更したいときや、失敗したな、というときにやり直しがきくのは便利。
ただし、段数を跨いで移動はできません。
1段目の〈タイル〉は1段目、2段目の〈タイル〉は2段目と、同じ段内でのみ移動可能です。
また、移動によってボーナス対象だった形が崩れてしまった場合――
入手済みの〈ボーナストークン〉を返却することになってしまうので、くれぐれも注意しましょう。
 
ゲームを通じてやっていくことは、以上です。
・資源を得る
・タイルを買って置く
・タイル更新
・タイル移動
つまりはこの4アクションのみ。やることが明快でプレイしやすい内容ですね。
――あとは〈タイル〉の種類についてもご紹介しておきましょう。


【タイルの種類】
まず、色は「赤・青・緑・白・黒」の5色が存在します。
どの色を主に集めていくかは、他のプレイヤーの動向を見て決めましょう。
……かちあうと場のタイルの取り合いになるので、おいしくありません。
 
絵柄の種類としては、まず動物。
写真のように「ジャッカル」「ファルコン」「スカラベ」の3種類が存在します。
これも、他のプレイヤーとの兼ね合いでどれを集めるか決めるのがいいかもしれません。


続いての種類は写真の3つ。左から順にご紹介します。
 
・得点タイル
このタイルはゲーム終了時、単純に「1枚2勝利点」として換算されます。
色との兼ね合いもありますが、場に現れたら率先してGETするのがいいでしょう。
 
・倉庫タイル
GETして自分の場に設置すると同時に、〈タイル〉と同色の〈資源トークン〉1個をこの〈タイル〉の上に乗せます。
これは、所有資源として支払いに使えますが、手持ち上限にカウントされません。
つまり、手持ちの資源がすでに5枚で制限いっぱい――これが6枚目でも、手番終了時に破棄しなくてOK。
……これは〈タイル〉の購入が捗ること請け合いですね。
また、乗せた資源の使用後は、同色タイルを個人的にストックしておく倉庫として使えます。
これを活用することで、常時6個以上の資源を所有しておけるようになるわけですね。
……直接得点には結びつきませんが、侮りがたい効果ですよ。
 
・書記官タイル
この〈タイル〉を購入した場合、設置後、即座にもう1手番実行することができます。
追加の手番は通常同様、「資源トークンGET」にしても「タイル購入」にしてもOK。
……行動数が増えるのはどのゲームでも最高に魅力的な効果ですよね。……アメイジング!


最後の1種は、砂漠タイル。
これといった効果はないですし、動物ボーナスも狙えないため、いわば損な1枚です。
なるべくなら、これ以外の種類の〈タイル〉を入手していくのがいいでしょう。
ただ、色ボーナスを狙うための1枚としては機能するので、あながち損なだけとも限りません。


【ゲームの終了】
プレイヤーの誰かが自分の場に13枚目のタイルを配置すると、ゲームは終了に向かいます。
全てのプレイヤーが同じ手番数になるようラウンドを実行して、いざ得点計算。
換算手順と得点になるものは、以下の通りです。
 
・「得点タイル」の点
・ボーナストークンの点
・同種の「動物タイル」が2枚以上隣接しているグループ。構成しているタイル1枚につき1点。
・同色のタイルが2枚以上隣接しているグループ。構成しているタイル1枚につき1点。
・自分が所有しているトークンの残り。種類に関係なく3枚ごとに1点。
 
これらの合計値が最も高かったプレイヤーが優勝です。
……汝こそ、名声高きエジプトの大商人だ!
もし同点なら、自分の場のタイル枚数が少ないほうの勝ち。
それも同じなら、所持している残り資源の少ないほうが勝ちです。
それさえも同数だった場合は、仲良く勝利を分かち合いましょう。……ポジピース☆


【まとめ】
作者が、2人用ゲームの傑作『ジャイプル』のスタッフだけあって、安定のプレイ感。
名作『宝石の煌めき』に似たシステムは、やることもわかりやすくプレイ時間もお手頃です。
基本的には黙々と自分の場を作っていくタイプのゲームなので、ケンカの心配もなし。
一応、お邪魔要素としては、相手が欲しそうな場の〈タイル〉を先に買っちゃう、という手もありますが。
……あとは、2人プレイなら場の左端の〈タイル〉を流しちゃうこともできるしね。
 
駆け引きの肝は、〈アンク〉によって〈タイル〉を補充するタイミング。
場の〈タイル〉が自動的に補充されない、というのが何よりこのゲームのミソでしょう。
補充タイミング一つで、おいしい1枚を相手に取られてしまったり、損な1枚を取るはめになってしまったり。
いざというときのために〈アンク〉は最低1枚は常備しておきたいところです。
……とか言いつつ、私はほぼ〈アンク〉なしで、向こう見ずなプレイをしていたわけですが(汗)


勝つために重要なのは、1枚の〈タイル〉で2役をこなすこと。
例えば、写真中央1段目の「青ジャッカル」と「青ファルコン」のような形です。
この2枚は「青ボーナス」にもなり、それぞれ「同動物ボーナス」にもなっている。
ボーナス点だけで、もう9点です。
置ける〈タイル〉の枚数は最大でも13枚と限られているので、一石二鳥が大事ですよ。
 
ぜひ皆さんも『アンクォール』で、飽きない商いを!
――といったところで、今回はここまで。
以上、どんぶり勘定な新井淳平がお送りしました。ではではまた~。


【ライター紹介】
新井 淳平(あらい じゅんぺい)
「小説家」兼「フリーライター」。
某専門学校のノベルス文芸学科で授業も受け持つ。
ボードゲームのプレイスタイルは、出遅れ追い上げ型。
ダイス運は、最悪だけどドラマティック。
【著書】
『シンデレラゲーム』(オリジナル小説・映画化)
『猫侍 久太郎、江戸へ帰る』(ノベライズ小説)
『猫侍 玉之丞、争奪戦』(ノベライズ小説)